キンキンに冷えた喫茶店で、春江一也氏の「プラハの春」を再読することでこの苦しい夏を乗り越えた気がする。
最初に読んだのは2008年だった。美しい百塔の街プラハ、ヴルタヴァ川、カレル橋の30体の彫像見たさに、その年の春、東欧を旅した。
カレル橋は観光客で賑わっていたが、ちょうどザビエルの像を見上げていると春の雪が舞い降りてきて小説のなかの1シーンのようだったのを思い出す。
子供の頃は、チェコと言えばチェコスロバキアだった。
東欧を旅行した時は、チェコとスロバキアは1993年に分離して別の国になっていた。なぜ分離したかは、行ってみてよくわかった。
プラハからスロバキアの首都ブラチスラヴァまでは楽しい汽車の旅だった。おとぎの国のような明るいカラフルな建物や屋根の色に反して寂しい雰囲気だった。経済状況が違いすぎるのがわかる。
チェコスロバキアの日本大使館の外交官だった春江氏が体験した1968年の変革運動がどんなものだったのかがかなり生々しく詳細に描写されている。無理に苦手なロマンスや観光案内を織り交ぜたストーリーになってはいたが、この人が本当は何を書きたかったかは下巻の第9章軍事介入を読めばよくわかる。
私がなぜ再読しようと思ったかというと、チェコの隣国ウクライナの悲惨な現況をニュースで見ていると、チェコ事件のソ連主導のワルシャワ条約軍のチェコスロバキア侵攻を思い出したからだ。
この秋に読む本はもう揃えてある。全部フリマで買いそろえた。積読にならなければいいが。
地政学で読む近現代史/内藤博文 物語ウクライナの歴史/黒川祐次 そこが知りたいロシア/池上彰
ドナウ河紀行/加藤雅彦